ストーリー

株式会社西粟倉・森の学校
牧大介 加工

森の学校としてはどのような経緯で協同組合に参画されたのでしょうか?

チーム西粟倉として百年の森林事業を進めていく中で、確かにそれぞれの会社が自社の利益だけを考えていてもいけないし、そもそも相互理解がない中でうまくかみ合っていないということには実感がありました。お互いの理解を深めていくことで見えてくるものがあるかもしれないなっていう期待を持ちながら参加させて頂いています。実際まだそこには全然至らないというか、時間はかかるとは思うんですけどね。じわじわお互いのことを分かるようになってきているというのが今の段階かなと。

始まる前と今のタイミングとで、どのような変化がありますか?

百年の森林事業、西粟倉の林業や木材産業は、百年の森林事業が始まった時点では補助金収入を中心に1億円くらいの産業規模だったのが、今加工を含めれば10億円くらいの産業になってきました。そうやってボリュームが出てくると、その中を調整していける団体が必要になった、っていうのが現時点での組合の存在意義です。今は最低限の調整が落ち着きつつあるのかなという気はします。お互いの理解を深めて、川上から川下までのいろんな会社が協力し合って森林林業の未来を切り開いていくっていう前向きなチャレンジを進めていけるのは、これからですね。

webサイトを見てくれているデザイナーさんや建築家の方に対して、どんな価値を創造していきたいですか?

山に木が生えているところから建築の材料にするところまで、柔軟に対応できるチームだと思います。これまでは森林所有者さんや木を切って出す山側の人たちが、建物が出来る過程に参画している感覚がないまま建物が出来るという流れでしたが、より川上の人たちも参加しながら一緒に動いて、組合が出来たことでその川上川下のつながりが見えやすくなっているんじゃないかなと思います。機能的には今までもできているんだけど、もうちょっと見えやすくなるし、一緒に作ってる感というのが村全体で出しやすくなるんじゃないかな。
それと、あんまり大きい木材産地だと対応が大味にならざるを得なかったりします。西粟倉は全体で見ても林業地としては規模が小さいし、うちの工場も中規模で中量生産だから、結構柔軟に対応できます。デザイナーさんや建築家の方に提供できる価値としては、規格からはず寸法のものや、特殊な寸法も用意することはできる。特殊な変わった木の使い方、こういう木の使い方をチャレンジしたいっていうときに一緒に考えていくことが出来る規模です。

なぜ森の学校として協同組合に参加することを決めたのですか?

会社は違うんだけど、協同組合を一つのチームとして考えていけるような人の集団になれたときに、その上でどんなことが出来るんだろうっていうのを見てみたい気がします。確かに、特に流通面などは、今まで僕たちが積み上げてきたという自負もある。でも僕たちだけの力でとにかくやり続けて描ける未来よりも、今まで分かり合えなかった人たちとお互いのことを理解しながら作っていける未来を見てみたいから参加することを決めました。

牧さん自身はなぜ森の学校という会社を始めたのですか?

当時道上村長や、山とか木が大好きな人たちが身近にいました。木を何とかしたい、このまま過疎化高齢化が一方的に進むのを食い止めて、なんとか西粟倉の人口を維持して村を存続させたい人たち。そんな中、木をなんとかするなら丸太で出すだけじゃなくて加工流通も含めて地域でいろんな価値を生めるようにしよう、そのためにはプラットフォームになるような会社がいるよね、という流れで、君がやりなよ、じゃあやりますっていう話になりました。行きがかり上ですよね。勝ち目があるからやってるというよりは、見てみたい未来に向かうためにはほかに選択肢が無かったんです。
森の学校の社長を僕が引き受けることを決めた瞬間って、木薫もみんなで頑張ってチームで結果を出し始めたような時期で。その熱にあてられて森の学校をやることにしました。勢いですよね。僕自身に火種があったというよりは、周囲の熱量のある人たちに囲まれて発火してしまったような感じはあります。
百年の森林構想も、木薫という具体例があったからビジョンが描けた面もあると思います。地域の中の動きは具体と抽象を行き来しながら流れが出来てくるので、道上村長の理念や考え、世界観があったとしても、具体的な存在が無いと百年の森林構想っていうのは肉付けが出来なかったと思うんですよね。その動き出しの流れを強くして肉付けをしっかりする過程で森の学校という会社を作らないと、つながるべきもつながらないと。

森の学校設立から10年ほど経ち、ご自身の中でモチベーションや段階は変化しましたか?

最初の5年くらいは会社をなんとかして安定させたいと思って必死でした。今は自社の経営のことしか考えられないっていう状況でもなくなってきて、ちょっと余裕を持てるようになってきました。混乱しかなくて自分たちが生き残りに必死だった創業期よりは、みんな成長してきてそれなりに余裕を持てるようになってきた。そうはいってもそんなに余裕はないからもめやすい。だからみんながもっと余裕を持てるようになったら、落ち着いて未来が考えられると思います。

牧さんの見てみたい未来ってどういう世界でしょうか?今その世界のどれくらいまで到達しているでしょうか?

最初は、森林や林業で100人くらいの雇用が生めたらすごいなってイメージはありました。今、森林林業関係だけならそこまでいけてないかもしれないですけど、関連する動きも含めると百何十人って雇用が生まれていて、ここまでいけたらいいなって考えていたところには来てる感じはします。それで一段上がって次に見えたビジョンは、百年の森林構想ってこれで良かったっけ、というところです。百年の森林事業も一定の結果が出て、雇用を作るといった経済的な面では一回成功したけど、生き物がたくさんいて豊かで本当に美しい自然を取り戻しながら、そこに立脚した経済があって人が幸せになるっていう未来はまだ全然実現してないなと思う。

一番に描いている理想は、そこなんでしょうか?

そういうことに興味を持ちながら25年くらいやってきているので、僕の中で執着があるテーマかもしれないですね。もともと自然や生き物が好きで、自然と人の関わり、というようなことに興味があって。この10年でそこに一歩近づいた感じはあるかな。木材の加工流通がひと段落して、もちろん今後もどう伸ばしていくかっていうチャレンジをしないと生き残れないけど、でももう少し森の多様性がどう価値を生んでいけるのか、豊かな自然で経済の好循環を生み出していけるのか、それはこれから10年間くらいやってみてから見えてくる世界だと思います。

牧さん一人で自然の中にいるという選択肢もあると思いますが、なぜ会社として取り組んでいるのでしょうか?

好きなものを残して未来につなげていきたいと思うと、僕が一人仙人のように暮らしていても残したいものを残せない。随分たくさんの人の人生を巻き込んでやらせてもらっています。後世に何かを残せる社会、地域っていうのは作っていけたらいいなというのはありますね。経済合理性の観点から見たとき、僕の人生全く合理的ではないです。ただ主題にしたいテーマがあって、その優先順位が高いので、その中で最大限できる経済をどう作っていくかを考えています。

最後に、牧さん自身の「欲しい未来」を一言でお願いします。

いい森があって、会社の中に閉じない良い仲間がいるっていう未来があればハッピーだなと思います。